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下町の顔
FACE


★歴史が長いですから、大切に守っていかなければならないですね。でもそれだけでは飽きられてしまうかもしれない。そのあたりはどうですか?
時代に即した嗜好の変化には対応しますが、くず餅屋としての領分はわきまえておりますので多角化に走ることはしません。但し、別会社をつくり、和菓子カフェ等のプロデュースをしていく事は考えています。まだ詳細は申し上げられませんが来年3月を楽しみにしていて下さい。

江戸時代より続く船橋屋の店舗
★ところで、国際的な品質管理規格であるISO9001を所得したそうですね。すごいですね。どうしてとられたんですか?
老舗の看板は一つの信用ですが、大手有名メーカーでさえ消費者の動向によっては潰れてしまう時代ですから、顧客満足ということを常に考えなければいけないんですよ。じゃ何が出来るかなって思ったとき、これからは食の安全の一つの回答としてISOをとらなければとなったのです。当時は業界で取得しているところもなく、最初は無謀だって、周囲には反対されました。職人の舌と指で作っているようなものがISOの基準に入るわけがないだろうと。ところがね、結果的にはISOという品質管理手法をベースにパートさんに至るまで組織がまとまりました。

2.いつか梅の木の街路樹を
★ちょっと地域の話をさせていただきたいのですが、渡辺さんというと地元に寄せる思いも熱いですよね(笑)。亀戸らしく、町の街路樹を梅の木にする企画があるそうですが、あれはどうなるんですか?
構想としては可能だそうですよ。問題はメンテナンスで、その予算をどのように出来るかということですね。枯らせたら町ぐるみでかっこ悪いですからね(笑)。一般の人を募って個人の木にする、品評会をする、あるいは協賛してもらって梅の木の横にお名前を入れる、いろいろな方向性がもてますね。でも、いい発想だって言うけど誰も動かない(笑)。下町特集を雑誌で見ても、亀戸が隅っこのほうになっていたりまったく出ていなかったりするでしょ。町をどのように面白くしていくかということはとても重要なことだと思うのですよ。大きな全体の目で亀戸を見たほうがいいのではと思います。

江東区の水路にゴンドラを
★大企業を誘致するとか?
不景気だ不景気だって騒いでいるだけでは、人は来ないですよ。例えば自治体と一緒に大企業に動いてもらって街づくりを一つの事業として企画してもらうとか。行動に出なければね。実際に自治体がからんで、町おこしの話し合いというのは時々あるんですよ。奇抜かもしれないけど、水彩都市江東区なんだから、亀戸から門前仲町までの水路にゴンドラ通してね、観光資源にもする。南北の縦の交通網にもする。水門の整備をすれば何とかなるでしょ。そんな風に起爆剤になるアイディアはあるはずですよ。それをちゃんとどこかに振って、いくら掛かりますよって。スーパーの大手さんとか地元企業さんにも出てきてもらって協賛して街づくりをちゃんとしていく。税金払うくらいだったら地元の町おこしどうですかって(笑)。

★亀戸に寄せる想い、熱いですね?
そうですよ。この町は歴史的にも良いところがたくさんありますからね。人の情とかもまだまだ残っていますしね。そしていつか梅の木の街路樹を!(笑)

★渡辺さん自身のお生まれは亀戸ですか?
亀戸ですけど、生まれたときと新婚のとき以外は住んでいませんね。家付きの子は店に近づけさせないというのが、父親のポリシーだったんで、千葉県の船橋で育てられました。現金商売ですから現金を見たり、周りのものからちやほやされたらろくなものにならないだろうと、僕は店から離されてました。忙しいときだけ親が働いている後姿を見せられてね。うちの父もおじいさんも養子ですから、外から見て気がつくこと、内にいて分からないことが、良く解かっていたと思うのですよ。だから私の場合は大学を卒業しても外で好きにやれと。7年間銀行員をやっていました。だから私は重圧とか継がなければということは余りないんですけど、でも船橋屋を僕の代でつぶしたらお墓に入れないと思ってますよ。自分の時代を引き継いで自分の息子に渡して行く……ですからこの会社が自分のものって感じではないですね。親父にもやるかやらないのかって言われたことはないです。好きにしろと言われただけです。僕は親父を尊敬していたからやろうかなって思いました。

★好きにしろって、言葉はすごいですよね。小さい頃はどんなお子さんでしたか?
千葉の山の中でね、蛇つかんで泥にまみれて裸足で走って。悪がきで大変でしたよ。学校にランドセルを忘れて帰ってくるような子供でしたね。ところが中学校に入る直前に麹町に一家で越したものですから、中学は麹町中学校。公立ですが名門中学校。そこに蛇しかさわったことがないやつが入ってしまった。こんなところに俺がいていいのかと思いましたね。今でも忘れませんが、一年生の最初の期末試験が330人中、308番(笑)。

★ははは、すごい子供時代でしたね。では最後に座右の銘を教えてください。
「我以外皆我が師」ということですね。吉川英治さんの言葉ですが、これは大事にしています。


まさしく、老舗の風雲児にふさわしい意気揚々のお話に、取材陣唖然・呆然という場面が何度もありました。起こした原稿は20,000文字、原稿用紙換算50枚に渡る取材内容を一挙放出できないのが残念です。取材後の雑談で、くず餅の食べ方裏バージョンの美味しいお話を聞きましたので、おすそ分けします。「小麦粉を振ってバターをひいたフライパンで表面カリカリに焼くんです。わさび醤油やにんにく醤油で食べると美味しいですよ。赤ワインにあいますよ。」

船橋屋サイト http://www.funabashiya.co.jp/

※2004年7月収録
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