下町探偵団ロゴ万談ロゴ下町探偵団ハンコ
東京下町Sエリアに関連のある掲示板、コラム・エッセイなどのページ
 トップぶらりグルメくらしイベント交通万談 リンク 

下町音楽夜話

◆第489曲◆ オルガン・ジャズはお好き?


2011.11.5

ヘンリー、ジョジョ、リンゴのガルサ3兄弟がロス・ロンリー・ボーイズと名乗り、華々しくデビューしてきたのが2003年だった。時の流れの早さについていけない気分がしてしまうが、もう8年も前になるとは驚きだ。デビュー・アルバムに収録されていた「ヘヴン」でグラミー賞まで受賞してしまったときには少々意外でもあった。まさに神のご加護かという面持ちで静かに喜んでいた信心深いこの若者たちがどれほどのものか、最初は理解できなかったのも事実だ。テキサス州出身ということだが、明らかにメキシコ系であるからテハーノというやつだ。ヘンリー・ガルサのギターはブルースをルーツにしているというが、はっきり言って1960年代70年代のブルース・ロックそのものである。しかし、コーラスを聴けば紛れもなくテックス・メックスという血は隠せない。必然的にサンタナに似た印象を持つことになる。

当初ポップなシングル曲「ヘヴン」だけ聴いてもさほど惹かれなかったが、ブルージーな「オンダ」のギターを聴けば、それなりの実力の持ち主であると知れた。そんなわけで、デビュー・アルバムではヘンリー・ガルサのギターにしか注目が集まらなかったが、時が経つにつれて3人ともなかなか上手いぞということになってきた。自分の中では3作目とされる「フォーギヴン」が評価のピークとなる。曖昧な言い方をするのにはわけがあって、企画ものやライヴ盤が多く、いったい何枚アルバムがリリースされたか分からないのだ。今年の3月にリリースされた現時点での最新作「ロックパンゴ」が、通算4作目のスタジオ・アルバムだという記事を目にしたときには、思わず「ウソだろー」と声が出てしまった。ともあれ、我が家には8枚ほど彼らのCDがあるので、そう言いたくなることをご理解いただきたい。

とにかくライヴ演奏がやたらと格好良い連中なのである。ヘタにCDに手を出すよりは、YouTubeでライヴ動画でも眺めているほうが、この連中の真価が理解できるような気すらしてしまう。どうもCDとなると小ぢんまりとまとまってしまって、一回り小さく見えてしまうというマイナス面も持っているのは事実だ。その点でも3枚目の「フォーギヴン」だけは図太い低音が心地よく、曲調もロック寄りのものが多くて好印象なのである。一方、4枚目の「ロックパンゴ」は、血の濃さが前面に出ているという評を見てしまっており、大震災のせいもあって、買いそびれていたのである。しかしここにきて、一年も経っていないのに、ボーナス・トラックを7曲追加したデラックス盤がリリースされるというプレス・リリースがあり、「どうせならそちらを待つか」という気になってしまった。何と2012年2月にクラヴ・クアトロで初来日公演をやらかすとかで、来日記念盤だという。おいおい武道館や国際フォーラムじゃないのかと信じられない思いなのだが、とにかく予約を入れなければ…。

しかし、よくよくこの情報を読んで、一気に買う気が失せた。来日記念盤に追加収録されるボーナス・トラックのうち5曲は、ミニ・アルバム「1969」がまるまる突っ込んであるではないか。随分乱暴なことをするものだ。「1969」は実にコンセプチュアルなミニ・アルバムで、5曲全てがカヴァー曲なのである。しかも、サンタナの「イーヴル・ウェイズ」、ブラインド・フェイスのテイクが有名な「ウェル・オール・ライト」、ビートルズの「シー・ケイム・イン・スルー・ザ・バスルーム・ウィンドウ」、トニー・ジョー・ホワイトの「ポーク・サラダ・アニー」、ドアーズの「ロードハウス・ブルース」という、いかにも1969年という時代を象徴するような選曲で、完全に完結したコンセプト・アルバムなのである。結局のところ、「ロックパンゴ」に関しては、残る2曲が追加収録されているEUR盤かUSデラックス盤を探すしかないといったところである。どうもボーナス・トラックがいろいろあるヴァージョン違いが存在したりする連中は面倒でいけない。

実のところ、我が家ではオフクロ様がサンタナの大ファンだったのだ。自分はオフクロ様のお供で毎回来日公演にも脚を運んでいたがためにアルバムも買い続け、聴き続けていたようなところがあるのだ。とりわけラテン・ロックが好きというほどではないのだが、ついつい懐かしいような、心躍るようなところがあるのだ。L.A.のロス・ロボス然り、ロス・ロンリー・ボーイズに関しても、当然聴くものというような無意識の反応を示してしまったのである。しかし、この連中、非常にポップなうえに、カントリーやらブルースやらの影響も受けており、先達以上に懐が深いと思われる。結果的に、一層惹かれる部分もあるのだ。将来性という意味では、現代版3大ギタリストと言われるデレク・トラックス、ジョン・メイヤー、ジョン・フルシアンテ以上に、ヘンリー・ガルサには期待してしまう。如何せん、次は何が飛び出してくるか分からないようなところもあり、圧倒的に面白いのだ。しかも弟たちも実力をつけていることは明らかで、特にジョジョ・ガルサのテクニカルなベースにはひそかに期待を寄せているのである。そんなわけで、わけの分からん来日記念盤なんぞ出してないで、ニュー・アルバムを出せと思っているのは自分だけではあるまい。できることなら、ストレートにブルース・ロックで直球勝負するようなアルバムを期待したいところだが、贅沢というものだろうか。


江東区、墨田区、中央区、台東区のネットワークサイト