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下町音楽夜話

◆第493曲◆ ア・トリビュート・フロム・フレンズ


2011.12.3

いやはや、なんとも面白いトリビュート盤がリリースされたものだ。自分は結構トリビュート盤という企画が好きで、メンツを見て好きなミュージシャンが含まれていれば大抵買ってしまう。その際、誰に対するトリビュートかということはあまり気にしない。悪食と自負するほど何でも聴くので、誰に対するトリビュートであれ、さほど問題がないというだけなのだが、トリビュート盤が出るということは、それなりのミュージシャンであることは間違いないし、他人の演奏でまた違った趣きになったカヴァー曲は意外なほど面白いものが多い。似た傾向のミュージシャンによるカヴァーの中に、ちょっと違ったジャンルのミュージシャンが含まれていることも多いのだが、ミュージシャンの意外な一面が覗けるような企画は尚よろしいではないか。そして、いずれもが真剣勝負の場なのである。

オリジナルが個性的なものであれば、カヴァーする側はそれだけ不利という気もする。オリジナルを超えたカヴァーというのは滅多にないが、個性的な曲であればそれだけ曲のイメージが固まってしまっており、リスナー側の心理からして不利に働こうというものだ。好きな曲であれば尚更かもしれない。トリビュートする側のミュージシャンは、それなりの覚悟で臨まないと評判を下げるだけという気もしないではない。大体が似た傾向の連中が一堂に会して思い切り比較されるようなものなのだ。それだけ考えても、ヘタなカヴァーなどできるはずがない。案外力の入った演奏が聞けるのは、その辺の事情もあるのではなかろうか。

さて、今回話題にしたいのは、大好きなヒゲじいたち、ZZトップへのトリビュート盤「ア・トリビュート・フロム・フレンズ」である。まず、ここ数年で入手したトリビュート盤の中で最高の一枚であると断言しておこう。参加しているメンツも豪華なら意外な隠し玉まで収録されていた。というのも、トップバッター「シャープ・ドレスト・マン」を演奏している「The M.O.B.」なるバンドのメンツが問題なのだ。ヴォーカルはエアロスミスのスティーヴン・タイラー、ギターは何とジョニー・ラングである。この2人の取り合わせだけでも買いだが、バックアップするリズム隊は、何とフリートウッド・マックのジョン・マクヴィーとミック・フリートウッドである。確かにZZトップはブルース・ロックにカテゴライズされるであろうバンドだが、いきなりブルースには相当うるさい連中が集まって面白いことをやっているのだから堪らない。一聴、これでは後続組が辛いだろうと思ったが、意外にもみな頑張っており、素晴らしいレベルを維持してくれていた。

2番手はフィルターによる「ギミー・オール・ユア・ラヴィン」であるが、これもなかなか侮れない演奏である。音圧の高さが嬉しいハードロック仕立てのグッド・カヴァーである。そして、自分のフェイヴァリット・チューン「タッシュ」が早くも3曲目で登場する。演奏するのはグレース・ポッター&ザ・ノクターナルズだ。2010年の同名アルバムのインパクトは凄まじいものだったが、彼女の渋いハスキー・ヴォイスもここではさすがに少々分が悪い。この曲はインパクト勝負だ。シンプルなリフの繰り返しは、ヘタにいじれない完成度なので、ごまかしはきかない。ブギ仕立てにしたのは正解だったろうが、少々厳しい評価になってしまうだろう。この曲に関しては、エイドリアン・ヴァンデンバーグ在籍時のホワイトスネイクの来日公演のアンコールでも笑える歌詞のファイン・チューンが聴けるが、あのホワイトスネイクでもオリジナルのインパクトには太刀打ちできていなかったように思う。この曲は、素材的に厳し過ぎるかもしれない。

その後はニッケルバックによる「レッグス」、ガンズ・アンド・ローゼスのベーシストだったダフ・マッケイガンのバンドによる「ガット・ミー・アンダー・プレッシャー」など、グッド・カヴァーが続く。ただしドートリーだけは気に入らなかった。クリス・ドートリーはZZトップをカヴァーするにはキレイ過ぎる声質だ。「ウェイティン・フォー・ザ・バス/ジーザス・ジャスト・レフト・シカゴ」をかなりオリジナルに忠実なカヴァーで聴かせるのだが、どうしても違和感が拭えない。演奏はいい感じにハードでいかにもといったところだが、どうにも相性の悪さが際立っており残念なカヴァーである。

毛色が違うミュージシャンということでは、「ラフ・ボーイ」をカヴァーしたフージーズのリーダー、ハイチ人のワイクリフ・ジョンと、「ラ・グランジ」をカヴァーしたカントリー・シンガー、ジェイミー・ジョンソンだろうか。軽めのアレンジの「ラフ・ボーイ」は耳について離れない面白いカヴァーだし、ジェイミー・ジョンソンは他のロック・グループに全くひけをとらないハードな演奏で、カントリーの要素などカケラもない。声も渋めで文句なしだ。このように、素晴らしいカヴァーだらけの「ア・トリビュート・フロム・フレンズ」、ベスト・テイクを選ぶとしたら、やはり新盤がリリースされたばかりのニッケルバックだろうか。The M.O.B.も楽しいし、ウルフマザーやマストドンも悪くなかったが、頭一つ抜けていたように感じられた。さて、オリジナルを聴き返して、じっくりと聴き比べでもしてみるか。


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