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下町音楽夜話

◆第606曲◆ 珍盤だらけのミラクル・ワールド


2014.2.1

正月明けの最初の週末、新宿でしばらく時間をつぶす必要が生じ、当然のように中古レコード店に入ったのだが、妙に混雑しており驚いた。どうやら世の中全ての業種でセール期間中ということらしい。以前はボーナスとお歳暮とクリスマスの関係から、年末商戦が一般的だったが、最近は慌ただしい師走に買い物をしている余裕がないということで、元旦からスタートする新年の初売りに続けてのバーゲンが最大の稼ぎ時という店も多いという。確かに街には、大きな紙袋を持った女性がやたらと目立った。消費税が上がる前に大きなものを買っておくかという駆け込み需要も確実にあろう。小売りはここで頑張らないと後が怖い。その一方、男性は大人しいものだ。男性の消費活動が話題になるとすれば、オタク消費がいいところであろう。

さて、オタクが牽引する消費の現場、某レコード店の中では、100円箱が通路に並んでおり、消防法的にちょっと危険なのではないかと思わなくもなかったが、腰が痛くならない程度に体を捻って12枚ほどの収穫物をゲットしてきた。2千円で釣りがくるのだから、ちょっと安すぎることがかえって気になってしまう。欲しい盤が見つかればラッキーと素直に喜べばいいのだろうが、ここまで安いとやはり市場が荒れているとしか思えない。40年以上レコード漁りを趣味としてきた自分の見立てでは、査定をしていないも同然の値付けなのである。いくつかご紹介してみよう。

まず、フォーカスの活動休止前最終盤「コン・プロビー」が帯付き国内盤で100円だった。ヤフオクで出れば5千円までは出してもいい盤だ。ヤン・アッカーマンが去り、ジャズ系のフィリップ・カテリーンがギターを弾いているので、正当なフォーカス・ファンは好まないアルバムかもしれないが、ジャズ・ロックと言われたこの時期のクロスオーバー・サウンドは、他のメンバーの猛烈な演奏テクニックもあって、決して低く評価すべきものではない。しかも、P.J.プロビーがヴォーカルをとっているのである。この人物、レッド・ツェッペリン人脈で語られる男で、1969年の「スリー・ウィーク・ヒーロー」というアルバムは、レッド・ツェッペリンの4人全員が参加しているコレクターズ・アイテムの典型なのである。

他にも100円で入手した珍名盤はまだまだある。スティーヴ・ミラー・バンドの「ジ・アドベンチャー・オブ・ア・スペース・カウボーイ」というベスト盤もその一枚だ。オランダの雑誌の読者投票で選曲されたこの盤、希少価値だけでもなかなかのもので、正直なところ、初めてお目にかかった。一瞬、我が目を疑った一枚である。他には、既に所有している盤ばかりだが、名曲「テル・ミー・サムシング・グッド」を擁するルーファス・フィーチャリング・チャカ・カーンの「ラグス・トゥ・ルーファス」、ベッド・ミドラーのセカンド・アルバム、ジャック・テンプチンのファースト、珍盤中の珍盤、ELPの浮世絵ジャケ・ベストはシュリンク付のプレミアム・コンディションだ。エルヴィス・コステロの「マイ・エイム・イズ・トゥルー」も、かなりグッド・コンディションのオリジナル盤である。これなんぞ、欲しいマニアは多いだろうに…。

まだある。レッド・ツェッペリン崩壊後、ヴォーカルのロバート・プラントは動き出しが早かった。1982年のファースト・ソロ、「ピクチャーズ・アット・イレヴン」は何気で名盤だと思っている。その一曲目を飾った「バーニング・ダウン・ワン・サイド」の12インチ・シングルが500円で入手できた。この盤にはアルバム未収録曲「ファー・ポスト」が収録されており、高値で取引されている一枚なのである。あえてレッド・ツェッペリンとは違う路線で新たな一歩を踏み出したことは賛否両論あるが、1980年代のロバート・プラントのアルバムは、いずれも高く評価されて然るべきものである。

何はともあれ、今回の収穫の中で自分が最も嬉しかった100円盤は、先日3千円近くしていたのを、「ちょいと高すぎるな」と諦めた記憶がまだ新しい盤なのだ。ものは「2010年宇宙の旅」のサントラ盤である。これも非常に状態のいい盤である。名曲「ツァラトゥストラは書く語りき」を、ザ・ポリスのアンディ・サマーズが、いかにも1980年代といったアレンジで聴かせたものである。いや、別に、この演奏がいいとか思っているわけではないのだ。ただ、そんなに高い代金を支払いたくないだけとも言える。これも珍盤といえば珍盤だ。まったくもって、楽しいではないか。100円箱はやはり珍盤だらけのミラクル・ワールドなのである。何はともあれ、腰が痛くならない限りは、最高の暇つぶしではないか。


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