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下町音楽夜話

◆第609曲◆ ザ・ロイヤル・セッションズ


2014.2.22

フリー、バッド・カンパニーの名ヴォーカリストとして20世紀ロックの歴史を飾り、そして現在はクイーンと活動を共にしているポール・ロジャースに関しては、いくら賛辞を贈っても過ぎることはない。その経歴に負けないだけの実力も認めよう。とにかく歌が上手い。ブルース・ロックに関しては、第一人者と言って過言ではないだろう。そのポール・ロジャースが久々にソロ・アルバムをリリースしてくれた。R&Bやソウルの名曲を、オリジナル盤で演奏していた人間も多く交えた陣容で録音した「ザ・ロイヤル・セッションズ」である。随分大上段に構えたタイトルだなと思ったら、メンフィスの名門、ロイヤル・スタジオで録音したということに由来するそうだ。なるほど、である。

国内盤は先行発売のうえ、ボーナス・トラック3曲が追加され、しかもDVD付きという。とりあえず買いである。「アイ・サンキュー」「ウォーク・オン・バイ」「ボーン・アンダー・ア・バッド・サイン」といったなじみの曲が並ぶことが嬉しい。ボーナス・トラックとして収録されているサム・クックの「シェイク」や「ワンダフル・ワールド」も、何故本編として収録されなかったのか不思議なほどいい出来だ。バラードも「アイヴ・ビーン・ラヴィング・ユー・トゥ・ロング」とくれば文句なしである。結局のところ、彼らが子どもの頃に聴き馴染んだヒット曲をやっているだけなのだろう。何だか楽しそうな雰囲気が伝わってくる気がしてならない。

自分が子どもの頃から好きだったフリーの「オール・ライト・ナウ」やバッド・カンパニーの「キャント・ゲット・イナッフ」といった曲が、いまだに忘れられず、時々引っ張り出してきては聴いてしまうのと同じことなのではなかろうか。そういったことを、この連中もするのだろう。とにかく、この世代のミュージシャンは、みな古い曲が好きらしい。寄ればセッション、カヴァー・アルバムも数多の名盤を生み出している。確かに印象的で忘れられないメロディも多い。自分にとっては、リアルタイムで聴いた曲ではないにせよ、好きな曲が多いことは事実だ。そういえば彼は、ザ・ファームのライヴでも古い曲をやっていたな。

2週間ほど遅れてアナログ・レコードも届いた。何と200グラムの超重量盤である。ダウンロード・コードも付いている。実に嬉しい仕様である。ジャケットはCDの裏ジャケの写真を裏焼きしたものが使われている。…CDの裏ジャケが裏焼きなのかな。アナログ盤の裏ジャケはロイヤル・スタジオの前での集合写真が使われており、やはり楽しさが伝わってくるナイス・ショットである。CDであれ、一聴して分かるヴィンテージ機材を使ったアナログ録音は、さすがにこの内容によくマッチしている。雰囲気よく録音したことだろう。ライヴに近いカタチで録音されたことも、この内容であれば間違いあるまい。昔ながらのやり方で録音された、全然オーバーではないロイヤルなセッションではないか。

とにかくポール・ロジャースは、こういった企画ものに強い。1993年にもブルースの名曲を大勢の名ロック・ギタリストともに録音した「マディ・ウォーター・ブルース」がある。もう20年前にもなるのか。こちらも歴史的な大名盤だ。何せジェフ・ベック、ブライアン・メイ!、ニール・ショーン、デイヴ・ギルモア、スラッシュ、ゲイリー・ムーア、リッチー・サンボラ、トレヴァー・ラビン、スティーヴ・ミラー、そしてバディ・ガイといった錚々たるゲスト・ギタリストのラインナップは、二度と実現しないだろう。果たして「ザ・ロイヤル・セッションズ」を「マディ・ウィーター・ブルース」のR&B+ソウル版と見るか、はたまたロッド・スチュワートが大ヒットさせた「グレート・アメリカン・ソングブック」や「ソウルブック」のポール・ロジャース版と見るか、いかようにも考えられるが、多くのミュージシャンがやりたくてもなかなか実現しない企画ではなかろうか。さすが、実力者といったところだ。

1960年代70年代に活躍した多くのミュージシャンは、団塊の世代かもう少し上といったところだろう。そろそろ「人生の総括」とか「人生を集約する一枚」などといった企画が増えてくるのではないかと思っていたが、やはり現実となってきたようだ。エリック・クラプトンの2000年以降の活動を見ていると、誰もがそう思ったことだろう。それにしても、いい企画だ。これでメンフィスのローカルなミュージシャンの仕事も増えれば一石二鳥ではないか。今後、この手のアルバムが増えることを期待しないではいられない。


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