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下町音楽夜話

◆第666曲◆ 終わりは始まり


2015.3.28

さて最終回である。13年間、週1本のペースで書き続けてきたが、この間にも音楽を取り巻く状況は大きく変化した。スタートした2002年時点はアナログ厳冬期、ダウンロード販売はまだなかった。いまではアナログが息を吹き返し、CDが売れなくなったという。自分自身もアナログ志向が一層強まり、コレクター的な性格も出てきた。インターネットの影響力の大きさはいまさらここで言うまでもないが、自分自身は個人的にPCを使い始めた理由が音楽関係のデータベースを作るためだったので、昨今のウェブ上の音楽関連情報の充実ぶりは想定外だった。ウィキペディアをはじめとした情報がどんどん充実してきて、個別にデータベースを作る必要がなくなったと感じ始めたのは2010年頃だろうか。マイナーなミュージシャンや古いレコードの情報は、まだまだ十分とは言えないが、概ね必要とされる情報はウェブで検索できる。単にインターネットと言うよりは、グーグルのおかげと言うべきか。

自分の場合、小学校4年生のときに父親の転勤で東京に出てきたが、東京の学校に馴染めず、さっさと家に帰って音楽ばかり聴いていたことが音楽好きになった原因でもあるが、そこから44年間、飽きもせず聴き続けているのだから相当のハマり様だ。いまだに当時のチャート(ヒット・パレードと言っていた)に入ってきたポップ・ミュージックは忘れようもないどころか、毎日店舗でドーナツ盤をいじり、古い曲を中心に流しているのだから、最近はさらにその辺の音楽への愛着が深まっている有り様だ。10代の頃に好きだった曲には格別の愛着がある。

マイケル・ジャクソンの「ベン」やビヨルンとベニーの「木枯しの少女」、コカ・コーラのCMにも使われたザ・ニュー・シーカーズの「愛するハーモニー」、CCRの各シングル曲といった辺りが原点にあるわけだが、当時の音楽好きは誰もがそうであったように、ロックに傾倒していくのに時間はかからなかった。高校でアマチュア・バンドに参加した頃にはベック、ペイジ、クラプトンの3大ギタリストにものめり込み、ピンク・フロイドやELPといったプログレッシヴ・ロックにも手をだした。ディープ・パープルもリアルタイムで購入したのは「マシン・ヘッド」からだが、ずっと聴き続けている。それでも、ハードロック路線に行ききってしまったわけではなく、シンガー・ソングライターものやウェストコーストの面々、ポップな要素を内包するフリートウッド・マックやアンブロージアといった連中のほうが好きだった。コンサートに関しては、1975年のエリック・クラプトンが最初で、それ以来、結構な数の来日公演を目にしてきた。ほぼ常に誰かしらのコンサートのチケットを持っており、それを楽しみにしながら頑張ってきたという印象がある。あくまでも一音楽好きとして、音楽と良好な関係を保ってきたのである。

ウォークマンが普及して音楽を携行するようになったときも、アナログ・レコードからCDに主要メディアが切り替わった時も、そしてケータイとインターネットが普及して世の中のライフスタイルが大きく変化した時も、常にどうやって音楽を楽しむかという視点でモノを見る自分がそこに居たわけで、55歳になった今振り返ってみる限りは、ここまで音楽に生かされてきた人間だったと感じている。44年間同じ趣味を続けているのだから、これは死ぬまで続けるということなのだろう。自分の趣味を結晶化したようなカフェを清澄白河につくったことも、こうして俯瞰すると、自分の人生の中にあらかじめセットされていた予定のように思えてくる。29年間の公務員生活もその準備期間と思えてならない。

2002年以降は、音楽に関して「書く」という楽しみ方が加わり、音楽情報を発信するための作業が新たな音楽との接し方を求めてきた。書くためにいろいろ調べることにもなり、知識がより明確になったことは大きな副産物だった。記憶を辿る行為を繰り返すことにもなり、曖昧だった記憶が鮮明になった経験も数限りない。自分にとっては、非常に意味のある行為だったのである。これを止めてしまうのは勿体ないという気もしており、下町探偵団での連載はストップしても、自分自身のサイトで発信することは続けようと思っている。「下町音楽夜話」はいったん終了するが、www.ongakuyawa.com というオリジナル・ドメインを取得できたので、「続・下町音楽夜話」として新たに始める予定である。これまでご愛顧いただいた皆様には心から御礼申し上げます。清澄白河のカフェ「tournantes」や「続・下町音楽夜話」も、御贔屓のほど、よろしくお願いいたします。長い間おつきあい頂き、有り難うございました。


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