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下町の顔
FACE


2.最後まで互いに寄り添って
★本ですが、だいぶ売れましたね。
ベストセラーよりロングセラーになって、長い間沢山の人に愛していただいて幸せな本だと喜んでいます。

★日韓共同でアニメにするお話も出ていますね。
そうですね。でも私は物書きですから、本のほうがいいですけどね。アニメはシナリオライターという手が加わりますからね。

郡司さんの著書
★ところで幼稚園児向けにお話の会というもの長年されてますよね。
何でお話の会をしたかというと、盲導犬が年をとってプライドをなくしてしまって目も弱っていろいろトラブって、でも、手放さないでいる以上は最後まで盲導犬のプライドを持っていて欲しかった。なんていうのかな、こしょこしょ生きるのは嫌いなのね。目の見えない盲導犬にプライドを持たせたい、って思ったのね。

★お話の会はある意味ベルナを始め盲導犬のお仕事ということになるのですね。
そう、犬ってね、自分がとても注目されるのが好きなんですよ。ペリラだってベルナの話をしている間はずっと眠っているんですよ。イスの影に隠れるようなってしまったり、お尻を向けてしまったり。だけどペリラちゃんのね、というとこちらを向くんです。犬だって年を取ればみすぼらしくなる。だからこそみんなの前に出て盲導犬なりに緊張すれば生きがいになるじゃないですか。

★それは今までベルナに支えてもらったお返しだったのですか?
お返しというよりも、最後までお互いに支えあっていこうということだと私は思います。
目が見えないベルナと私とで二人でやる仕事といったらそれしかないですよ。自分でもいいアイディアだったと思っていますよ。

3.親切すぎるんです(笑)
★下町の話を少し。この辺りに住まわれて何年ですか?
24年です。

★下町の良さって何ですか?
どうかなぁ……、下町の良さ。私はここの生まれ育ちじゃないし、ここが好きということで来たわけでもないから。でも、どこに住んでもいいけど自分の住んでいる街を住みやすいように変えていくには、待っていたら駄目なんですよね。自分から発信しないと。

★今住んでいるところは何が好きですか?
好きでもないし嫌いでもない、はっきり言えば(笑)。冷たい町ではないけど特別温かい町とも思わないわね。腹の立つこともあるし。

★どんなことがですか?
親切すぎるんですよ(笑)。私そういうこと余り好きではないのね。それで少し嫌な顔をしているらしいの。それですごく怒られたことありますね。

★親切にしてあげてるのにって?
なかなか社会には
受け入れられないですね

そう。でもそのあげているのにって、精神はいけないと思うのよ。でもそれを言うと余計いけないことになってしまうので私は、聞いたままにしているんだけど。だけどそれはどこに住んでもそういうことってありますよね。だから私はそういうもんだと思っている。

★子供の頃はどんな子でしたか?
非常に理屈ぽい子だといわれましたね。人見知りが激しくて、人と仲良くしていると疲れてしまう。目が見えなくなってからは自分のほうから努力しなければ輪が広げられなくなってしまうでしょう。だから自分を変えてきたんだけど。

★今何か特別に困っていらっしゃることもないんでしょうね。
特別喜んでいることもなければ困っていることもないです。淡々と。受け入れられるものは受け入れて、努力しなければいけないことは努力もしますけれど。性格ですから喜びも悲しみもあるさということ、そういう気持ちですね。だから本当のことを言えば私なんかインタビューしたってなんも面白いことはないと思うのですよ。
だけど盲導犬と一緒に暮らして今でこそこういう社会だから一緒に入れてくれるけれども、最初の頃は店に入るにしてもドアのところで交渉するわけですから、入れる入れないってもめて、断られたってその次だってまた入れてくれって懲りずに行くわけですから。ねぇ。そんな優しさばかりでは暮らしていかれない。

★強くなりますよね。
強いですよ私は。言われたらすぐ言い返すんですから。最近こそね、ああそうですねって言いますけど、ベルナと暮らしている頃はすぐに言い返さないと言われっぱなしだから暮らしてなんかいかれないことがあってね。行政だって今でこそ障害者の子供も受け入れてくれるかもしれないけど、私の頃は盲導犬だって保育園に連れてきてはいけないって、そこを私一人でかけあうわけですよ。そのときなんか誰も助けてくれなくて交渉に行くんですよ。行政は心情的には郡司さんを応援しますけど管理する部門が違うから、直接自分で交渉してください、と。自分も親だから分かるからと。是非頑張ってくださいって。これだけよ(笑)何でも受け入れて、そうですねぇって笑っていたら子供を育ててこられなかったですよ。

★座右の銘は?
継続は力ですね。お話の会の時に四つの心を話します。
まずあきらめない心、努力する心、工夫する心、新しいことに挑戦していく勇気の心、この4つの心を持ち続けて生きていくと良いでしょうって。今ね夏休みでしょ。宿題も追い込みになるでしょ。郡司さんを訪ねたい。あるいはインターネットに質問などが来るのよね。でもね、聞こうと思うだけでは駄目なのよ、って。あなた流の努力をしましたか、工夫しましたか、って私は言うの。私の話を聞いて夏休みの自由研究ですよってのは駄目でしょう。是非若いお父さんやお母さんもこの四つの心を育てられるように努力をしてもらいたいと思います。

★そうですよね。今日はありがとうございました。


「私は強いのよ。時には人に嫌われるくらいね」。取材中に何度も郡司さんから発せられた言葉です。私は強い、呪文のように自らに言い聞かせて前に進んでこられた郡司さんであったような気がしました。強さも弱さも体験した人は真に優しい、郡司さんの笑顔は優しいです。「ベルナのしっぽ」が日韓共同でアニメ化されるそうです。楽しみです。
※2003年8月収録
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