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下町音楽夜話

◆第118曲(1)◆ 東京JAZZ2004
2004.09.25
いやはや、至上最悪のイヴェントに出くわしてしまった。今回は「東京JAZZ2004」というイヴェントを罵りたおしている内容である。そういったものを読みたくない方はどうか読まないでください。愛読者の方々は、私がよほどのことでもない限り悪口は書かないことをご存知だろうから、今回は特例中の特例だと思っていただきたい。

とにかくこんなにヒドいイヴェントはこれまでなかった。毎年夏場になると多くのイヴェントが開催され、どれも観てみたいなと思うような出演者リストが並ぶ。マウント・フジ・ジャズ・フェスティヴァルやフジ・ロックのように海外にまでその名を轟かせる名イヴェントもある。観客は普段より多い場合が多いだろうから、出演者も熱が入る。ワン・ステージが短いのが難点と言えば難点だが、その分密度が濃いステージになるとも言える。だいいち、楽しそうだ。

しかし昨年から始まった「東京JAZZ」だけはどうもいけない。ハービー・ハンコックをメイン・パーソンに据えていたので、そそられはしたが、昨年は会場が遠いことを理由に敬遠してしまった。ところが今年は、何と下町江東区で開催されるというではないか。日程と会場が発表されたときには名を連ねていなかったTOTOまで出演することが決まり、これは行かなければ、ということになったのだが、声をかけた人間にはみんな「ヤメトケ」の返事をもらい、チケットは買わずに前の週になったところへ、「やっぱり行こう」とお誘いがかかり、二つ返事で乗ってしまった。

声をかけてくれたT氏は、滅多に一緒にライブに行く御仁ではないが、無類のジャズ好きである。自分にジャズを教えてくれたお師匠さんの一人のような人間でもあるので、誘われたら断れない。もう一人、M氏もT氏とともに演奏活動もする、音楽には非常に造詣の深い人間である。予定が入ってなかったわけではないが、とにかくこのメンバーに誘われたら断れない。予定を変更してでも、行くことにしたのである。

チケットは予想外に売り切れに近く、土曜日と日曜日の昼の部と夜の部があるのだが、前の週の木曜日の時点で、日曜日の昼の部の立見席があと4枚あるということで、3枚が入手できたのである。そして当日は現地で待ち合わせ、前座のような扱いのブルー・エアロノーツ・オーケストラという女性だけのビッグバンドの演奏がもう始まっているようなタイミングで入場した。まず居場所を決め、ビールを買いに行く二人を横目に、アルコールで耳を鈍らせてはならぬと自制した。戻ってきた2人に、ヤケに細い音で鳴っているP.A.に不満を漏らしたところ、前座はこういう扱いなのかね、と2人とも賛同してくる。

さて、か細い音のビッグバンドを2曲ほど聴いてから、小休止が入り、上原ひろみの登場である。ちょっと興味のあるピアニストだっただけに、初めて観るライブに期待は膨らんでいた。小休止中に「あの音でピアノ・トリオをやったらどうなるかね」という会話が引っかかったものの、「音源が少ない分、分離がよくなり有利かもしれない」という希望的観測も聞かれてはいた。そして演奏開始直後、T氏と顔を見合わせた。「ピアノが聴こえない・・・」「おい、ミキサー、何やってんだよー」などなど、口から出るのは恨み言ばかり。急転直下、気分が暗転した。

それにしても、上原ひろみの演奏は素晴らしかった。ぜひ機会をあらためて観てみたいと思った。これはここしばらくでは、屈指の演奏だったろうに、この音響でさえなければ最高だったのに・・・、悔やまれて仕方がなかった。30分ほどの短いステージが終わり、再び小休止。次の出演者はアコースティック・ギターと女声ヴォーカルのユニット、フライド・プライドである。「フライド・プライドの音が悪かったら悪いけど帰る」と言い始めるT氏。ミキシング・ボードの近くにいたものだから、エンジニアに聞えるように「聞こえねー」を連発していたのだが、そのとき一人の中年男性が騒ぎ始めた。酒も入っている様子だったが、「責任者を出せ、全然聴こえないじゃないか」とくってかかっているのが聞えてきた。このときはニヤニヤしながら様子を眺めていられたのだが、フライド・プライドの演奏が始まってからは、そんな余裕もなくなった。先ほどの中年男性はすっ飛んで戻ってきて「この音は何なんだ」と騒いでいる。そしてT氏とM氏は本当に帰って行ってしまった。

実はこの二人、一緒に演奏活動をしているグループの人間が、この日、新橋のサムデイで演奏しているのとダブル・ブッキングを承知の上で来ていたのである。M氏の方は好きなTOTOに未練もあったようだが、「これじゃ聴いても仕方ないね」と諦め顔でT氏に同行して帰って行ったのである。T氏は別れ際に「チケット代を返す」と言って現金を差し出したのだが、さすがに受け取れない。別にあなたが悪いわけではない。どちらかというと、TOTOだけが目当ての自分は、詫びを言って残らせてもらった。自分の知らないアマチュア演奏家のライブと、音響が悪いかもと思えどTOTOである。やはり残るべきと思いつつ、しかし一旦会場の外に出た。アコースティック・ギターがボコボコいう音をたてていて、とても聴いていられなかったのである。

会場の外に出てみて判ったのだが、ずいぶんと帰っていく人がいるのである。やはりあの音を聴かされたら、時間の無駄と思うのだろうか、その考えも正しいなと思いつつ、とりあえず状況を携帯電話でつれあいに報告し、缶コーヒーを買ってベンチで持参していた文庫本を一時間ほど読むことになってしまった。4番目の出演者、リール・ピープルは、ソウルフルな黒人女性ヴォーカル2人をフィーチャーしてなかなかいい演奏を聴かせていた。これは素晴らしい演奏を披露しているなと思いつつも、会場内になかなか戻る気がしなかった。ようやく重い腰をあげ、リール・ピープルのステージ終盤のタイミングで、会場内に再入場した。案の定、メチャクチャなバランスで鳴っている。ヴォーカルはよく聴こえているのだが、キーボードが聴こえていない。ベースもモコモコして、全く聴き取れない。これも別の機会に聴いてみたいグループだなと思いつつ、本日のところは申し訳ないが、全くダメだった。